地中熱・地下水熱・温泉排湯・空気などの“再生可能エネルギー熱”を熱源としたヒートポンプ製品で「持続可能な社会の実現」を目指します。

2019/6/18

空調タイムス5月29日号に記事が掲載されました

業務用・産業用のヒートポンプ(HP)メーカーのゼネラルヒートポンプ工業(社長=柴芳郎氏、本社統括営業本部・名古屋市中村区名駅2―4514は、自前技術を駆使したHP製品をシリーズ展開する一方、ユーザーの個別要求に応じた一品一様のオーダーメードにも応じる。過去10年間の製品開発の中では特に①産業プロセス向けの洗浄工程用HPの開発②医療施設向けの透析熱回収HPシステムの開発③再生可能熱エネルギー利用を実現する地中熱利用HPの高効率化と製品群の拡充――という3方向のHP技術を磨き、製品化してきた。2030年に向けても小回りが利くHPメーカーとして多様な製品・システム開発に挑み、HPの新たな可能性を探求する。これまでの開発品の中で特定分野の需要を開拓した製品を他分野へ横展開する動きも志向していく。

産業プロセス向けの洗浄工程用HPは現在「プロセスHP」という名称に変更して工場向けに訴求している。同HPは冷熱と温熱の同時供給が可能。工場などの熱利用施設に対し、蒸気ボイラーや電気ヒーターの代替用熱源機として同社が提案しているもの。加熱専用型で加熱COP(成績係数)2・9、冷却・加熱併用型で総合COP5・0に達する高効率運転を可能にした点が特長。導入事例の中には、従来の蒸気ボイラーと蒸気配管を使用したシステムと比べ約84%の省エネを達成した事例がある。現在は機械部品製造工場の切削工程での切削+洗浄プロセスで導入実績を積み上げている。それ以外にも、ハウス栽培や植物工場での冷暖房を賄う農業プロセス、蒸気ボイラーが必要となる各種工場でのベーパライザー用熱源で利用する気化プロセス、空調機の実験室向けにオプションの加湿器を実装して温湿度を制御する恒温・恒湿プロセスなどでの潜在需要を想定している。

業務用HPの展開では、ウォーターテクノカサイ(本社・東京都小金井市)、日機装(本社・東京都渋谷区)と共同で医療施設向けの透析熱回収HPシステム「スマートEシステム」を開発、14年度から提案営業を仕掛け、導入事例を増やしている。同システムは透析排水等を熱源とし、水冷式HPとインバーター技術でわずかな排出熱を少ない電力で、より大きな熱エネルギーに増幅させ、その熱をRO装置の原水加温に利用するもの。透析装置全般の大幅な節電に貢献する。スマートEシステムは18年2月、平成29年度省エネ大賞の製品・ビジネスモデル部門で「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した。

同社は地中熱利用HPの開発力と製品群も豊富に取りそろえる。柴社長は「ビル・工場などの建築物でZEBを志向した省エネを実現するための高効率空調の手法として、地中熱利用を提案している。特に地下水熱利用は有効な手段であり、当社にはそのノウハウと実績がある」と語る。地中熱関連製品では、今春から地下水熱交換ユニット、地下水直接利用型HP、再生可能エネルギー熱を複合利用できる天空熱源HPといった3種の新製品を投入。現在拡販に向けた提案営業を強化しているところだ。

同社は自社製造した各種HPの品質管理の徹底と品質向上を意識した改善活動にも社を挙げて取り組んでいる。以前から実施していた品質会議を強化する形で約1年前から品質管理委員会を発足。これまで特定部門主体の品質管理を実施してきた旧体制を改め、品質管理委員会が主体となる横くし体制の下で部門間の垣根を超えた横断的な議論の場を設け、技術的課題と向き合う品質管理体制を現在徹底している。この点も同社の信頼評価につながっているようだ。

柴社長は今後の製品開発と事業展開について「HPの高効率化への取り組みはもちろんだが、今後は制御技術のブラッシュアップやAI技術の取り込みにも挑戦したい。営業展開では、これまで業務用HPと地中熱利用HPの販売実績を伸ばしてきたが、今後は工場での排熱利用や地下水熱利用など未利用熱を有効活用する提案を切り口に、産業用HPの拡販を目指す」と語った。

スマートEシステム