地中熱・地下水熱・温泉排湯・空気などの“再生可能エネルギー熱”を熱源としたヒートポンプ製品で「持続可能な社会の実現」を目指します。
2023/1/11
<記事原稿>
業務・産業用ヒートポンプ(HP)メーカーのゼネラルヒートポンプ工業(社長=柴芳郎氏、本社・愛知県名古屋市中村区名駅2-45-14)は、2022年も再生可能エネルギー熱利用設備として普及が進む地中熱利用システム(GSHP)に対応したHPチラーやHPビル用マルチシステムの納入実績を増やした。特にZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)案件でGSHPがスペックインされた際のHP供給では、国内HPメーカーの中で多くの実績を残している。同社は持ち前の開発技術を生かし、運転効率が一層向上する低GWP(地球温暖化係数)冷媒採用の高効率HPを22年に投入した。また人工透析病院向けの透析熱回収HPシステムに関しても、データを管理に最適なクラウド型遠隔監視システムを追加機能として商品化した。新年以降、同遠隔監視システムをGSHPなど多用途でのHP向けにも応用展開していく方針だ。
同社の地中熱源対応HPは、空調・給湯用途では国内最大級のGSHP利用で省エネ化を図り、設備運営費の大幅削減と年間39%のCO2削減を実現した八幡平市立病院(岩手県八幡平市)への納入事例をはじめ、県庁舎、市役所、消防署、学校、病院、介護福祉施設、公民館、屋内競技施設など、公共性の強い施設での納入実績が豊富。また、GSHPの導入に前向きな企業の本社ビルなどにも多数の納入を実現している。近年は北日本、東日本エリアでの官公庁物件を中心に、ZEB案件で採用される事例が増えている。
柴社長は現況について「地中熱源対応HPに関する引き合いは各お取引先や新規のお問合せも含めて引き続き多く頂戴している。原材料価格の高騰、部品類の調達難など製造業が抱える悩み事は、当社も同じだが、HP製品の供給力は維持できている。ただ、当社のHPが出荷できる状況にあっても、納入予定先の建築資機材や他の設備機器の納期調整の都合で工期ズレが発生し、当社の業績計上も先送りとなる案件が少なくない。このため足元の業況は受注が堅調であるものの、22年度上期ベースの売上高は前年同期並みの進展状況」と話す。
こうした環境下にあっても同社は22年度も地中熱源対応HPの納入事例を増やしている。納入事例の一部を取り上げると、官公庁系の案件では、岩手県岩手郡葛巻町新庁舎に総能力216馬力、新潟県三条市の県央基幹病院に同108馬力、北海道千歳市の支笏洞爺国立公園支笏湖博物展示施設に同60馬力、新潟県小千谷市の錦鯉養殖施設に同117馬力、民間案件では長野県北佐久郡立蓼科町内のホテルに同60馬力、北海道北広島市内の農業学習施設に同34.5馬力のHPを納入した。
技術開発の取り組みでは、22年1月にユニット型高効率水冷式HP「ZQスーパー(ZQS)」シリーズを発売。同社従来機と本体サイズを同等にとどめながら大容量・高効率を実現した。再エネ熱も有効利用できるHPとして提案営業を本格的に始めている。ZQSの冷媒には一般的なR410A採用機と、R410AよりGWP(地球温暖化係数)が大幅に低いR454B採用機を同時発売した。R454B採用機は同社がこれまでに開発・製造してきたHPの中で最高効率に達するという。
昨年2月に開催された第42回冷凍・空調・暖房展「HVAC&R JAPAN2022」(主催=日本冷凍空調工業会)に同社は出展、ZQSを展示したところ、前向きな引き合いが多かったようだ。水冷式のHPであるため、今後はGSHP用途でも採用が見込まれる。加えて、新年以降には「愛知県の補助金の採択を受けて新冷媒を採用した産業用HPの開発を進める」(柴社長)計画もあるという。
業務用HPの差別化提案では、透析熱回収HPシステム「スマートEシステム」の営業を例年以上に強化した。「22年度も環境省の補助金を絡めた案件で京都市内の病院でご採用頂き、12月に納入を終えた。新年以降の受注見込み案件も積み上がっている」(谷藤浩二常務)。22年度から同システムのオプション機能として、導入後の消費電力量、加熱能力、COP(成績係数)などの運転状況や、電気料金削減効果、CO2排出量削減効果を適時遠隔で確認できるクラウド型遠隔監視システム「ZQクラウド」を商品化した。これによりオンリーワンのHP技術に一層付加価値を加味した形だ。「『ZQクラウド』は当社がこれまで市中に納入したHPに追設できるため、今後は地中熱源対応HPにも応用する形で商品化する」(同)としている。
ゼネラルヒートポンプ工業は現在、名古屋市緑区内に本社工場(第2工場・第2工場)とサービスセンターを構えている。これに加え、23年1月に第1工場と第2工場の双方から程近い場所に立地する敷地面積約660平方メートルの居抜き工場を取得予定。同工場敷地は同社が現在使用中の駐車場に隣接している。利便性を生かし、同工場を改修し本社第3工場として稼働させる計画。柴社長は「来春には改修工事を終えて諸設備を整え、操業したい」との意向を示した。